不遇なフグ

どうしてこんな

散歩②

散歩の話の続きです 

 

家を出て2時間 

神社に行く道が分からず変なところを1周してしまった でも大丈夫 誰にも咎められない 急ぎの用でもない

元々方向音痴で、地図があれば目的地にはたどり着けるが遠回りしてしまう 

いつも道を間違えて凹むが今日は自由だ 

 

神社に行く前に駅前のホールに寄った、特に何をする訳でもないけど 

もうここで演奏することは無いかもしれないと思ったり、行きたかった演奏会のポスターに「延期」とシールが貼ってあるのを見たりして泣きそうになった 

色々悔しい けど歩いているうちに思考はまたぼんやりしてきた 

 

家を出て2時間半くらい 

神社に着いた 

静かだ 人は全然いなかった 祭りの時人で埋め尽くされていた様子を思い出して寂しくなった 

「正しい生活を送れますように」とお願いしてきた 

庭園がある 池に錦鯉や亀がいる 橋を渡って眺めていた 

ずっとぼーっとしていた 無心だった 神社を出る時に何も考えないことは幸せだなぁと思った 

だいぶ遠くまで来た そろそろ帰ろう 

 

商店街を歩く この前買った新しいヘアオイル、まだ匂いが続いている いい匂い 

古めかしいブティック、花屋さん、素敵だ 

思えば今日色んな花屋さんを見れたな かすみ草が印象に残る

 

足が疲れた 休みたい 

純喫茶に入れない 

仕方がなくコメダ珈琲店に入る 

人がいっぱいだった そっとドアを閉めた 

いつも運が悪い 

急に寂しくなって同期に会いたくなった 認められていないことと愛されていないことを忘れていた 忘れるのも大事だ 

出来ることならずっと忘れていたい

 

家を出て3時間くらい

結局ミスタードーナツに入った ポンデリングが美味しい 

コーヒーを飲んではじめて喉の乾きに気づいた 

よく歩いたな 普段は登下校で7000歩ぐらい歩いているけど、その倍歩いた 体力はまだ余っている

店を出る 

足が痛すぎる! 小指がひん曲がりそうなくらい とにかくつま先がしんどい 

でもしばらく歩いているうちに慣れてしまった 浮腫んでいただけか 

なるべく住宅街を歩く 土地勘があるようでない場所、田舎や都会という概念を感じさせない場所が一番好きかもしれない 

好きだった人間が笑いかけてくれたことを思い出したが「そうかそうか~」という感じで流すことが出来た 穏やかな心を取り戻した 

 

帰りもでかい駅のそばを通る 

ここでもいつも通っている道を通らず住宅街を通る 落ち着く 優しい心 

家が近付いてきて土地勘がある場所に戻ってきたので仕方なくいつもの大通りに出た 

トイレに行きたくてショッピングモールに行ってしまった 「いつも」を感じる場所に行くことは避けたかったが 

古着屋を覗いてしまった 覗くだけで服を買わなかったのが偉い 

空がいい感じのグラデーションだ 写真を撮りたかったけどあえてやめておいた なんでだ 

 

そんなこんなで家に帰ってきた ちょっと疲れたけれど満足で埋め尽くされていた 買わなきゃと思っていたものは買い忘れていた

 

道中白木蓮をたくさん見かけて嬉しかった 気持ち悪い話ですが、私の推しのカードに描かれている花なのです 

日光、花の匂い、空気の味、風の温度、普段の倍感じることが出来た 

いつものようにぐるぐる考えて辛くなりにくかった 常に昼寝しようとして意識が無くなる10分前ぐらいの脳内でいれた 時々普段の思考に戻りかけたけど、歩いているうちに忘れることができた

 

見た人や景色をいちいち記憶に刻もうとした 大学に入学してから辛い記憶ばかり刻みつけられてしまったので、優しい幸せな記憶を同じぐらい刻みたかった 

 

 

今日はまだ生きていていいかなと思った 大学を卒業したら今の全てから縁を切って今日みたいな生活をしたい もちろんちゃんと働く場所は見つけるけれど 

今までブラック企業で過労死するまで働きたいと思っていたけど、自殺する勇気もないしギリギリで生き延びてずっと辛いだろうからなんとか薄給でもゆとりのある働き方が出来る場所で働きたい 

また将来のことを考えてしまった 

 

数日後現実に戻されてこの穏やかな気持ちはきっと1日ぐらいで潰される 

絶望しなければならない 競走しなければならない 

穏やかな気持ちや記憶を書き留めて宝物のようにずっと取っておきたい 

人生はおしまいだけど今日は本当に楽しかった